教育改革懇話会提言(全文)
大阪市教育改革懇話会提言
平成12年2月
目 次
はじめに
1.豊かな人間性を育む心の教育
(1)豊かな人間性を育む心の教育とは
①心の教育のとらえかた
②体験、「学び」のプロセスの重視
(2)豊かな人間性を育む心の教育の進め方
①基本的信頼感を育む家庭
②「心の居場所」としての地域
③多様な経験を重視する学校
(3)学校・家庭・地域の新しいつながり
2.「大阪らしさ」を生かした教育
(1)「大阪らしさ」とは
(2)「大阪らしさ」を生かした教育活動の進め方
(3)特色ある学校づくり
①特色化の視点
②さまざまな特色化の在り方
③特色化につながる開かれた学校
おわりに
は じ め に
今日、我が国の社会は、国際化、情報化、少子高齢化等の急速な変化に直面している。また、都市化の進展とともに地域社会が著しく変化し、子どもの社会性や創造性を育んできた遊び場が減少し、併せて地域社会の人間関係が希薄化している。このことが、子どもの体力の低下や豊かな自然に触れる機会及び人間性を育む社会体験の不足に少なからず影響を及ぼしている。
家庭においては、家族の小規模化が進み、従来家庭がもっていた教育的な機能が十分果たせない状況が座視できないまでになっている。以前は兄弟姉妹(きょうだい)等との人間関係から自然に身につけることのできた基本的な生活習慣や社会性などが、現在では習得しがたくなってきている。また、職住分離のライフ・スタイルの進行に伴い、家族間のつながりが弱くなり、家族それぞれが孤立化するなかで、保護者が適切な教育力を発揮できない状況も生まれている。
近年、社会の情報化の進展に対応して、インターネット等の情報通信ネットワークを活用できる能力を養うことが学校の重要な課題となっているが、一方でテレビをはじめとするマスメディアから流される大量の情報は、正しい判断力と情報選択能力が十分育っていない子どもにとって、必ずしも良い影響を与えているとは言いがたい面もある。
また、今の子どもは物質的な豊かさや便利さのなかでゆとりのない忙しい生活を送っているにもかかわらず、人生を楽しく過ごそうと考えたり、自分の意見を比較的率直に述べるなど、優れた面をもっている。
このように子どもを取り巻く社会状況が急激に変化してきているとともに、人々の生活様式の変化や価値観の多様化等も進み、教育についての考え方においても、子どもの個性や特性をより重視する方向が顕著になっている。
国においては、教育改革が急速に進められ、平成14年度から完全実施される学校週5日制において、「ゆとり」のなかで「生きる力」を育む教育が求められている。
大阪市においては、日本国憲法、教育基本法にのっとり、国の同和対策審議会答申や種々の人権に関する国際条約等の趣旨にもとづき、人間尊重の教育を基盤に、同和教育をはじめとするさまざまな人権教育に取り組むとともに、時代の変化に積極的に対応できる教育の実現に努めてきた。
21世紀を目前に控えた今、改めてこれまでの教育の成果をふまえ、長期的な展望に立って、これからの教育の方向性をまとめる必要に迫られている。
教育改革懇話会は、平成11年4月7日、教育長の求めに応じて、21世紀を展望した大阪市としての教育改革の基本方向の策定に資するために設置された。その際、次の4点が協議事項として示された。
①豊かな人間性を育む心の教育の在り方について
②学校・家庭・地域のそれぞれの役割と連携の在り方について
③特色ある学校づくりについて
④大阪らしさを生かした教育活動の実践について
これまで本懇話会は、この4点に沿って鋭意協議を重ねてきたが、今回その意見を集約したので、ここに提言する。
今後は、21世紀にはばたく「なにわっ子」の育成をめざして、各学校が子どもの個性や特性を重視するとともに、「大阪らしさ」を生かした特色ある学校づくりを進め、教育課程の改善工夫を重ねて、子どもの自ら学ぶ力や豊かな人間性の涵養に努めるべきである。同時に家庭と地域もその教育力を高め、学校・家庭・地域が相互に連携を強めつつ、それぞれの役割を十分に果たす必要がある。また、教育委員会にも、学校・家庭・地域に対するさらなる支援が期待される。
平成12年2月
大阪市教育改革懇話会
座長 山 﨑 高 哉
1 豊かな人間性を育む心の教育
(1)豊かな人間性を育む心の教育とは
①心の教育のとらえかた
心は感情の動きだけでなく、意志の働き、知的な働きからも構成されている。したがって、心の教育は、一般に言われている情操教育や道徳教育に限られるものではなく、身体の教育や感覚の教育、さらには知的な教育においても可能である。心の教育をあまり狭く考えないことが大事である。
心の教育はプラスの方向で考えられることが多いが、人間の心には明と暗(光と影)の両面がある。「善く、強く、明るい」心を強調するだけでなく、「悪く、弱く、暗い」心への配慮も必要である。子どものつまずきや試行錯誤等にも寛容でありたい。
子どもの基礎体力をしっかり育て、たくましく生きる力を身につけさせる必要がある。「食」の問題は単に身体の教育ばかりでなく、心の教育の基本にあるものとして重視する必要がある。
小さな段階から、五感を育て働かせる自然体験・社会体験・生活体験など、さまざまな体験を積ませることが心の教育の基礎として不可欠である。子どもが「学び」や人・自然との出会いにおいて、能動的、内発的に体験を豊かにふくらませることで心が豊かになり、人間的な幅もでき、多様な価値観を共有できる人間に育っていく。
自然体験を通して、レイチェル・カーソンのいう「美しいもの、未知なもの、神秘的なものに目を見はる感性(センス・オブ・ワンダー)」を涵養することが心の教育にとって特に大切である。子どもは自然との交流・交感により、「いのち」の大切さを実感するとともに、自然との「共生」の意識を育てるであろう。また、自然とのつながり、一体感を感じることのできる子どもは、他人とも最もよくつながることができ、たとえ孤独であっても一人で安定しているか、自らの孤独をバネにしていろいろな創造活動に精進できるであろう。
子どもに人生とは楽しいもの、生きるに値するものであるという自分の人生への肯定的な感情(自尊感情:セルフエスティーム)を持たせることが大切であり、この感情が「基礎心力」の重要な要素となる。
知的好奇心や探求心の育成は、科学の教育をはじめ、読書指導、各種の表現活動、観察活動等のなかで行われるべきである。
②体験、「学び」のプロセスの重視
心の教育は価値観を単に教え込むのではなく、自らの体験とかかわらせ、内面化させることが大事である。かけがえのない他者や自然、あるいは異文化等との出会いは自分の可能性にも気づかせてくれる。
子どもの豊かな資質を育むために、子どもの発達の状況を見きわめ、子ども自身に物事の判断をさせたり、責任を伴う選択をさせたりするような経験をより多くさせることが望ましい。さまざまな失敗や挫折を経験することもあるが、自らの行為によって得られた結果ときちんと向き合うような教育活動の過程そのものに、もっと大きな価値があることを見落としてはならない。
今の子どもには、失敗を恐れたり、お互いが傷つかないように摩擦を回避したりしてしまう傾向があるが、けんかをしたり、気まずくなったり、いやな思いをさせたり、させられたりしながら人との絆は結ばれていき、人の気持ちがわかるようになるものである。こういうことが、心の豊かさにつながることも忘れてはならない。
子どもをあまり型にはめず、子どもにできるだけ多く自由で束縛されない時間をもたせることが求められる。
ハンディやマイナスと見られているものをバネにして粘り強く自らのロマン(夢や志)を追求すること、豊かな社会のなかで「ハングリー精神」を養っていくことは、心の教育として見逃せない大事な側面である。
(2) 豊かな人間性を育む心の教育の進め方
①基本的信頼感を育む家庭
心を育てる場として、家庭が果たす役割は大きい。
子育てにはTPOがある。子どもが小さい頃には、基本的な信頼感を育成するために、身体接触(スキンシップ)や温かい言葉のやりとりを通じての心のつながりが必要であり、子どもの成長・発達に伴い、子どもとある程度の距離を保ちつつ、愛情をもって子どもを常に視野のなかに入れているという保護者の姿勢が大切である。
適時、的確なしつけが心の教育と密接に関連していることを見逃してはならない。
保護者は、自信と信念をもって子どもの教育にあたるべきである。保護者が、自分の生きざまや人生観、世界観を語ることで子どもとの対話が始まり、子どもは自分なりの生き方に目覚めていく。ただし、保護者も、絶えず自分自身を見つめなおし、子どもとともに学ぶことが必要である。
②「心の居場所」としての地域
子どもを「地域の一員」として地域のなかにきちんと位置づけ、子どもにふさわしい役割を与えることで豊かな人間性を育むことができる。地域の子供会活動や児童いきいき放課後事業は、遊びや各種のイベンのなかで人間関係づくりや社会のルール等を自然に学べる場として有意義である。
地域での子どもの「心の居場所」づくりをどうするかが重要な課題である。地域でさまざまな出会いや発見があるような交流の場を設定し、子どもに人間・自然・芸術文化との健全な関係を結ばせることが望まれる。
子どもの多様なニーズにあった「目的縁」・「学習縁」づくりを支援し、体験的活動の場を提供するとともに、自分探しを援助することが大切である。そのため、例えば、冒険遊び場を工夫したり、企業や地域の諸団体と協調しつつ、地域を学ぶ機会の充実を図ったり、社会教育施設などで高齢者や障害者、外国人等との交流が図れるような機会を充実させたりすることを提唱したい。
地域にはさまざまな活動団体があるが、それぞれ独自に活動するのではなく、可能な限り連携・協力を図り、調和のとれた総合的な活動を考えていく必要がある。
③多様な経験を重視する学校
学校においては、多様な体験活動を生かした心の教育を推進することが大切である。地域の人との出会いや異文化をもつ人との出会い、自然との出会い等といった重層的な関係を教育課程のなかにどう位置づけるかがポイントとなる。
地域の商店や事業所、福祉施設等を学校の「学び」の場とし、勤労体験や福祉体験をすることが重要である。子どもが社会のルールに従って生活するという体験をし、責任や役割を担う厳しさを学ぶことが求められている。
子どもが興味を持ったこと、やりたいと思ったこと、「なぜ」と疑問に思ったことを追求できる体験を学校で積み重ねていくための舞台として、「総合的な学習の時間」が新たな「学び」の絶好の枠組みを提供することになるであろう。
道徳教育において、道徳的心情と道徳的判断力が分けて考えられがちであるが、いかに心情面で優れていても、判断が下せない、行動が伴わないのでは意味がない。大事なことは心情、判断力、行動力あるいは実践的な意欲を一つのものとしてとらえることである。心に響く教材・資料を開発するとともに、豊かな体験を通して、自立・自制心、責任感、他人を思いやる心や人権を尊重する心、社会貢献の心などを育成することが期待される。
日頃から教師と子ども、子ども同士の好ましい人間関係を育み、心の教育を充実させ、一人一人の子どもの個性と特性を育てる学級づくり、学校づくりの重要さを看過してはならない。
(3) 学校・家庭・地域の新しいつながり
子どもに豊かな人間性を育むためには、学校・家庭・地域がお互いに連携を密にし、協力することが大切であり、これまで以上に学校がさまざまな面においてより開かれたものとなる必要がある。
学校は、教育活動や教育方針について多くの機会を見つけて保護者や地域住民に積極的に情報を発信し、十分説明していくことが必要である。また、学校へ保護者や地域住民がもっと自由に出入りできるように、「自由参観デー」や「参観ウィーク」を設けてはどうか。学校ホームページの積極的な活用も望まれる。
学校が地域のなかに教育的資源を見いだし、教育の目でデザインし、それを学校の教育活動に積極的に導入し、活用することが大切である。地域の人材バンクをつくり、多様な職業・経験・価値観をもつ「地域の先生」が学校の授業にかかわる機会を多くする。また、地域において職業体験をしたり、地域行事に参加したりすることなどは、子どもに社会性や職業観を培う豊かな体験活動の場となるほか、地域との新たなかかわりが生まれ、地域との連携の新しい在り方を探る上で非常に有益である。
学校が本来もっている機能や、これまで培ってきた能力をもとに、生涯学習の観点から地域コミュニティの拠点、地域文化創造の場としての学校の活用を考えていく必要がある。
学校に対する保護者や地域の声を集約し、学校教育に反映させることを考えてみることが大切である。
保育所や幼稚園、保健所等の公的機関が子育てのための学級や講座を開催したり、子育ての悩みや不安を抱える保護者に対し相談や指導を行うなどの「子育て支援」をするとともに、入園前保育や延長保育等のサービスに一層力を入れることが望まれる。
学校・家庭・地域の三者を全市的にまとめ、連携の要となるのは教育委員会である。教育委員会が指導性を発揮して企画・調整を図ることが重要である。全市の地域教育活動を支援するセンター的機能をもつシステムをつくり、総合的な施策を推進すると同時にその評価を行うことが期待される。
2.「大阪らしさ」を生かした教育
(1)「大阪らしさ」とは
古来より大阪は難波宮を中心とした国際交流の拠点として栄えたが、今日でも「国際集客都市大阪」という言葉に象徴されるように、人・物・情報が集まる国際都市である。それゆえ、大阪人は国際的に開かれ、異質なもの、多様なものへの関心と寛容な精神をもっている。
伝統的に大阪は実学を重んじる傾向にあり、江戸時代の日本を代表する学問所であった「懐徳堂」や「適塾」においては、自由で合理的な精神や進取の気象が息づいていた。大阪人には今日でも根強い現実的で理性的な精神が宿っている。
昔から、大阪は豊かな商人の町として、お上に頼らない、官よりも民を尊重する民活の町である。大阪人は、自主独立の精神、アイデンティティや自己責任の確立した市民である。他方、大阪人には、義理人情に厚く、相互扶助、協調、連帯の精神に満ちているところがある。
商人が支えてきた「商都大阪」の特徴は、才覚を働かせ、「ど根性」で新しいことに挑戦する今日のベンチャービジネスの元祖といったところにある。
大阪人は建前や法律・規則の締め付けを嫌い、自己の能力や判断に頼って主体的に行動し、多様性の時代に適合した柔軟なものの考え方をする。大阪人は、コミュニケーションの取り方がうまく、またその努力をし、庶民的、開放的で、ズバリとものを言う反面、人の話をよく聞き、相手のことを常に気遣いながら話をする。大阪人がもっているユーモアや笑いは、大阪文化を支えるもとになっている。
これからは、従来の「大阪らしさ」だけでなく、新しい「大阪らしさ」を作り出そうとする努力も欠かすことができない。
(2)「大阪らしさ」を生かした教育活動の進め方
大阪の歴史・伝統・文化を生かした教育活動をより積極的に推進することが必要である。
自分の住んでいる町の歴史、伝承、伝統をもっと掘り起こす教育が何よりも大切である。地域の歴史や伝統・文化について、教師自身がもっと学ぶ必要がある。現在、子どもが学んでいる地域の教育内容については、さらに充実発展させていくべきである。
「商都大阪」という商人が支えてきた大阪の特徴を教育に生かしていく必要がある。地域の特色を生かし、実生活に即した職業教育や環境教育、消費者教育等の教材を学校ごとに開発し、推進することが望ましい。子どもに大阪発見の機会をつくるために、「大阪探検隊」等のグループをつくって活動させたり、古くからある大阪の文化、芸能(文楽、歌舞伎、狂言、地唄舞、上方舞、上方落語、漫才等)にふれる機会を多くもたせたりすることが大切である。
大阪弁に愛着をもち、残すべき美しい「大阪言葉」に対する誇りをもつような教育をする必要がある。そのため、「大阪言葉」を教材とし、「大阪言葉」で表現する活動をもっと教育に取り入れるべきである。
「大阪らしさ」は、自分から外へ発信した時に気づいたり、向こうから何か感想を言ってもらった時に気づくものである。発信したり返事をもらったりすることによって、「大阪らしさ」を感じるような大阪外の地域や人々との交流を図る機会を用意することも必要である。
「大阪らしさ」を生かした教育活動を進める際に、大阪市の進めている人間主体の快適で住みやすいまちづくりと関連させて考える必要がある。
「水の都・大阪」と昔からよく言われているが、河川交通の意味や中国、韓国・朝鮮、東南アジア等との交流の歴史を学ぶことが大切である。国際都市でもある大阪の特徴を生かし、国際化時代にはばたく人材を育成すべきである。そのために、世界的な人権尊重の流れのなかで、人権教育をより一層推進するとともに、国際理解教育や外国語教育、情報教育の充実に努める必要がある。
大阪人が自分の意見をはっきりもって自己主張できるよさを生かし、ディベートなどを授業のなかに積極的に取り入れていくべきである。
(3) 特色ある学校づくり
公立学校では、すべての子どもに同じ内容を同じ方法で教え、かなりの効果をあげてきた。このことが明治以降最近まで続いてきたが、今の子どもは昔の子どもと比べて変化しており、子どもの個性や特性、あるいは感性(の違い)を尊重しようという考え方も高まってきた。これからは子ども一人一人のさまざまなニーズに学校がどのように応えつつ、いかに学校の特色を出していくかが問われることになる。
特色ある学校づくりは、学校のなかだけでなく、教育委員会とPTA、そして地域とがそのつながりのなかで、幅広い観点から考えていく必要がある。
①特色化の視点
特色ある学校づくりは流行にとらわれてはならない。特色化の要は学校の教育の質をどのように向上させるかであり、したがって、学力の基礎・基本に限らず、人間形成の基礎・基本を確実に押さえて教育することが重要である。
子どもが生活し、学んでいる家庭・地域社会の特色をどう生かしていくかを考え、地域に根差した「最高」の教育を創造する高い志が求められる。特色ある学校づくりとは、学校の歴史性や地域性、その他潜在的にもっているさまざまな力を最大化するプロセスである。特色ある学校づくりの成否は、地域の実態をふまえ、校長が特色化の必要性を認識し、学校の伝統や校風を生かしつつ、教職員全体の創意工夫、自主性・自律性をどう発揮させていくかにかかっている。
②さまざまな特色化の在り方
特色というのは育てていくものであり、そのプロセスで結果として生まれてくるものである。それゆえ、特別なことをするのではなく、日頃の活動のなかで、今あるものの再発見から新しい取り組みが生まれることがある。
また、ある取り組みが学校において上級生から下級生へと受け継がれ、卒業しても自分たちのやったことが残っているということで、新たな縦のつながりができ、そのことによって特色が生まれることもある。
他の学校にない独特、特異なものを求める必要はない。地域的なものに新しい価値を与えたり、新しい組み合わせを考えたりすることにより、意図的に特色はつくりだせるものである。
地域に密着した問題を長期にわたって徹底的に学習するような、地域に根差した教育の実践が特色化の一つのポイントとなる。
学校施設をつくる際、学校のなかに、多目的スペースとして子どもが使い方を自由に考えることのできる空間をつくりだしたり、生涯学習の観点から新しい「学び」のスタイルや地域とつながった教育活動を意図的につくりだすことで特色化されることもある。
③特色化につながる開かれた学校
地域に向かってどう学校を開き、学校を活性化し、特色ある学校づくりに取り組むかを考えることが大切である。そのため、学校の機能や施設を地域住民に開放するだけでなく、地域住民が学校運営に参画する道をどう開いていくか、「学校評議員」の設置など、そのシステムづくりが緊急の課題である。
職場訪問、職業体験学習のように、地域や学習環境を活用した体験活動を取り入れ、学校の教育活動へ地域の教育力を導入するとともに、地域の活性化をも図る必要がある。
学校間、学校種間の連携・協力を図り、地域の教育ネットワークを整備することも望まれる。
学校に地域の活力を入れていくだけでなく、学校そのものが地域のコミュニティセンターとして地域住民の生活・文化を総合的に支援する機能を果たしていくことを考えなければならない。学校が地域の生活・文化の維持・創造を支援し、地域の「知恵」をどう統合していくか、今後の学校の大きな課題である。
学校が内部に開かれることも必要である。家庭・地域との連携を促進する教職員の意識改革を図るとともに、教育課程の弾力化や学校裁量の幅の拡大等の流れのなかで、校長がリーダーシップを発揮して学校の自主性・自律性を確立し、特色化を進めるべきである。
教育委員会としても、高い専門性と開かれた心をもった教職員の任用と研修の充実に努め、学校の特色化・活性化に向けて創造的、意欲的に取り組んでいる学校を積極的に支援するような開かれた姿勢を示すことが肝要である。
お わ り に
国が教育改革を進めているこの時期に、大阪市が独自に教育改革懇話会を設けられたことは、大変意義深いと考える。
現在、教育改革で必要とされることは、教育の「質」の向上である。教育の「質」とは、学校教育に限っていうと、教育内容・方法の質であり、教職員の質であり、教育行政及び学校経営の質である。
今回の提言においては、教育内容・方法ならびに教育行政や学校の在り方についてはかなりの意見を盛り込むことができたが、教職員の資質向上に関しては十分に触れることができなかった。
しかし、今回の提言においては、これまでの「教育すなわち学校教育」という見方を克服して、学校・家庭・地域の三者の連携・協力を視野に入れた提言が多くなっている。
今後は、この提言の趣旨を十分ふまえ、国や大阪市の各種答申等との整合性に配慮したうえで、大阪市の教育改革の基本方向を策定し、より具体的なプランづくりを進められることを期待する。




