相談事例 5.九九がなかなか覚えられない子どもへの対応(小学2年生)

九九がなかなか覚えられない

 小学校2年生の児童について相談が寄せられました。「Aくんは、学習面では、すばやく直感的に反応し「それって、こうしたらええねんな」と自分なりのやり方を見つけて取り組むことのできる子どもです。
 漢字は、書き順通りでないことが多いのですが、しっかりとした字を書きます。それが、秋から算数で九九の学習に入ると、2の段の暗唱ですぐにつまずき、なかなか覚えられません。それからは、算数の時間になると授業に集中できず、離席が目立つようになりました。それを注意する友だちとトラブルに発展するなど、対人関係でもしんどくなってきています。Aくんのような子どもへの支援はどうしたらよいのでしょうか」


認知特性を知る

 子どもたちが情報を「受け止め、整理し、関係づけ、表出する過程」、即ち情報処理の仕方は、「継次処理」と「同時処理」という、2つ仕方に分けることができます。
 「継次処理」とは、情報を順々に処理する仕方(例えば、漢字の書き順を覚える、ことばを聞き取るような場面での処理)であり、「同時処理」とは、複数の情報を一まとまりに関係づけて処理する仕方(例えば、漢字をへんとつくりで覚える、ジグソーパズルを組み合わせる場面での処理)です。
 この2つの力がアンバランスな場合、指導者は子どもの苦手な部分ではなく、反対に得意な部分を生かした教え方をする必要があります。

 【継次処理を生かした指導】
  ・段階的な教え方
  ・部分から全体へとすすめる教え方
  ・順序性を踏まえた教え方
  ・聴覚的・言語的手がかりを重視する

 【同時処理を生かした指導】
  ・全体的な概念や問題を最初に示す教え方
  ・全体から部分へとすすめる教え方
  ・具体的なものによる教え方
  ・視覚的・運動的手がかりを重視する


得意な面を生かした指導へ

 担当者は次のように助言しました。
 「九九を唱えて暗記する、聴いて覚えるという学習スタイルが苦手なようですね。また、漢字を書き順通りに書かないことが多いことからも、順を追って覚えたり考えたりすることが苦手ではないか、と思われます。

 一目見てわかる九九表を活用し、表の中の位置関係から式を暗記する指導に変えてみてはどうでしょうか。
 九九カードを使って、式を段ごとに順に並べていき、1つの段が並べ終わったら、裏をめくって、2の段なら『答えが2とびで増えているな』と確認しながら答えを覚えていくという方法もあります。

 九九の答えをパズルにして表を完成させる教材や、かけ算式を絵に描いてイメージ化することも有効です。

 また、お菓子の袋などに『2枚×6袋』等の記載がありますね。『かけ算探し』を宿題にして、具体的なものを見て覚えることもよいかも知れませんね。家庭でも同様の指導をお願いしましょう」


 後日、担任の先生からお電話をいただきました。「九九カード並べは、毎日昼休みに1段ずつやって遊びに行かせるようにしました。また九九パズルと『かけ算探し』を冬休みの課題にしました。かけ算探しは本児にとって楽しい課題だったそうです。3学期に入ってからは、九九が言えるようになってきました。算数の時間に自信を持って取り組めるようになり、離席もぴたりと止まりました」


                           

大阪養護教育振興会 月刊誌 「育誠」 平成23年1月号
「大阪市教育センターコーナー」より一部転載)