相談事例 4.教室移動が苦手な生徒への対応(高校1年生)

教室移動が苦手なAさん

  「1年女子生徒Aさんのことです。入学当初は移動先の教室が分からなくなり廊下で立ちすくむことがみられ、そのような時にはクラスメイトが声をかけ、一緒に教室へ行くことがよくありました。1学期の中間テストが終わった頃からは、保健室に行くことが多くなり、2学期の中間テスト以降欠課が目立ってきました。保健室では、養護教諭との会話を楽しみにしているようです。
 またノートを見ると、どの教科も授業の始めの部分しかノートが取れていないことがわかりました。彼女には、どのような支援が必要なのでしょうか」と高等学校の特別支援教育コーディネーターと担任から相談がありました。


気づきから支援につなげる

 このケースでは、
   ①「教室移動がうまくできなくて立ちすくんでいた」
   ②「保健室の利用回数が多くなっている」
   ③「板書をノートに写すことが少ししかできていない」
 との情報があり、担当者は次のようにアドバイスしました。

 「まず、彼女は保健室に心の居場所を求めているようですので、養護教諭の先生には、すぐ教室へ行くことを促すのでなく、Aさんの話を傾聴するようにお願いしてください。話しをきちんと聞いてあげることは、Aさんを心理的に支え励ますことにつながると思います。

 教室移動に困ったこと、板書が十分に写せていないことから、視覚的な認知や短期記憶に課題があることが推定できます。そこに焦点を合わせた支援を行いましょう。教室移動をしやすくするための支援ですが『初めての来校者が迷わないで目的地に行けるような案内板』を階段の踊り場などに設置してはいかがでしょうか。また、教室の時間割も『O曜日のO時限目のこの教科はOO実習室に行く』ということがよく分かるように作り直し、さらに曜日ごとに日めくりにした時間割にするなど、一目で分かりやすい教室掲示に工夫してみてはどうでしょう。

 ノートをとりやすいように板書の配慮もできるといいのですが。例えば字の大きさや行間の広さ、時間のとり方などの配慮です。
 今後は、保護者との協力もきっと必要になると思います。Aさんの中学時代の様子なども伺い、学校で取り組もうとしていることをお伝えになってみてはどうでしょうか」

                        


視覚的に分かりやすい支援へ

 学校では、文化祭が近く行われることもあり、「来校者が教室移動しやすいように」と、生徒会に校舎案内板の製作を提案され、各校舎の入り口や階段の踊り場に案内板が掲示されました。生徒の視点から見た、楽しく実に分かりやすい案内板でした。
 保健室で「校内にたくさん案内板ができたよね。文化祭で行きたいと言っていた催し物がある教室へ、それをたどれば一人で行けるよね」と養護教諭に励まされ、文化祭当日、Aさんはその催し物がある教室に一人で行くことができました。これはAさんにとって大きな自信につながりました。

 また、教室に曜日ごとの時間割が掲示されたことで、次時の移動先が分かりやすくなり、Aさんの教室移動への不安は軽減されたようです。

 板書の配慮として「文字は見やすい大きさで、すぐに消してしまうことは避ける」「ノートを取る時間の確保をする」また「板書量が多くなる教科・時間では前もってワークシートを作成・配布し、要点を書かせるようにして書く量に配慮する」など、全教科で取り組むことが校内委員会で確認されました。その際、「どの生徒にとってもノートをとりやすい授業づくりを目指そう」とも話し合われたそうです。

 Aさんの保護者との懇談では、学校の取り組みを説明して理解していただき、今後の協力の約束もできたとのことでした。


                           

大阪養護教育振興会 月刊誌 「育誠」 平成22年12月号
「大阪市教育センターコーナー」より一部転載)