相談事例 3.勝ち負けにこだわる子どもへの対応(5歳児)



運動会のリレーでのできごと


 幼稚園からの相談です。
 「5歳児クラスのAちゃんは、勝ち負けに強いこだわりがあり、何でも1番にならないと気がすまないお子さんです。また、遊びで負けそうになると不機嫌になったり、途中で投げ出してしまったりすることがたびたびあります。運動会でリレーに出ましたが、途中で負けそうになるとバトンの輪を投げてコースの途中から泣いて戻ってきてしまいました。参観していた保護者も大変ショックで、園としてもどうしてよいものか分からず、相談に来ました」


勝ち負けにこだわることについて

 勝ち負けのある遊びは、勝てばとても楽しいものであり、心が「快」の状況になります。負けることになれば、心は「不快」になり、しかも気持ちが不安定になります。発達障害のある子どもは、負けるかも知れないという予測がつきにくく、受け入れがたい結果になってしまうと癇癪を起こしがちになります。また、勝ち負けが遊びの中だけのことにしかすぎない、という状況の理解が難しく、「負ける=ダメなこと」と思い込んでしまうこともあります。「次、勝てばいい」「別のことでがんばろう」という気持ちの切り替えに苦手な面もあります。このほか、過去の失敗体験から抜け出せず、「次は絶対に勝たないとだめなんだ」と思いつめていることもあります。


「勝ちたかってんね!」の声掛けを

 「友だちと遊んでいて、勝ち負けにこだわる場面になると、トラブルに発展することが多々あります。その場で、どれだけ『次、頑張りなさい』となだめすかしても、気持ちの切り替えができません。勝つことにこだわることは、成長の一つとも思うのですが、友だちとうまく遊べないことは大変心配です」と担任の先生はお話しされました。
 担当者は次のようにアドバイスしました。
 「トラブルに発展してパニックになってしまったら、まず集団から離してクールダウンさせましょう。Aちゃんが落ち着いてから『勝ちたかってんね。負けて悔しかってんね。先生、その気持ちわかるよ』と子どもの感情を言語化してあげて、自分の気持ちを理解してもらった安心感を持たせてあげましょう。その上で、『でも、すごく頑張っていてよかったよ!』『勝つためには、次は何を頑張ったらいいかな?』『得意な○○で逆転だ!』などの、前向きな考え方を導いてあげましょう。感情の言語化と、前向きな考え方への導きは、不安や怒りの感情コントロールのために有効な手だてとなります」


勝ち負けの予告と頑張りをほめる工夫

 担当者は更に次のアドバイスをしました。「『この遊びには勝ち負けがあります。勝つ人がいたら負ける人もいます』と前もって勝敗が分かれることを予告し、『勝ってもいばりません、負けてもおこりません』と遊びのルールを作ります。Aちゃんが負けそうになっても怒らずに参加できていたら、すぐに『えらいね。頑張っているね』とほめてあげてください。先生からほめられたら、我慢できる時間が延びて、きっと最後まで参加し続けることができますよ。負けても最後まで頑張れたら、その時は最高級にほめてください」
 その後、Aちゃんは、負けても『またしようね。次は勝つから!』と決めポーズを取るようになったとのことです。


                           

大阪養護教育振興会 月刊誌 「育誠」 平成22年11月号
「大阪市教育センターコーナー」より一部転載)