通りすがりに友達を叩く 中学校からの相談事例です。 「1年生のAさんは、集団の中に自分から飛び込めないのですが、特定の仲のよい友だちはいます。そのAさんが、廊下ですれ違った時に、仲のよいBさんをひじで突いたり、背中を叩いたりして逃げていきます。そのたびに注意するのですが、『叩いていない。当たっただけや』と言います。叩かれたBさんは、『友だちやのに、叩かれるのは辛い』と言っており、せっかくの友達関係がつぶれないか心配です。どう指導したらよいでしょうか」「叩く」という行動について 特定の行動が繰り返されているのには理由があるはずです。そこで、まず、行動の機能について考えてみました。「機能」としては次の4つが代表的です。 ☆ もの・活動の要求 ☆ 注目の要求 ☆ 逃避・回避 ☆ 自己刺激 叩く行動で最初に思い浮かべる機能は、「逃避・回避」機能です。でもAさんはBさんのことを友達と慕っており、「Bさんから逃げたい、嫌だ」という思いや感情はなさそうです。では、AさんはなぜBさんとすれ違った時に叩いて逃げるのでしょうか。行動の「機能」を考える 相談に訪れた担任の先生に、その前後も含めて、行動を3分割して考えてもらいました。 この3分割によって、Aさんの叩く行動は話し相手がなく、一人で過ごしているときに起こりやすいことがわかりました。この行動には「注目の要求」機能があるのではないか、と考えられます。Aさんは『叩く』ことを、Bさんの気を引くための行動として、誤学習している可能性が高いようです。行動を客観視させてみる 担当者は、次のようにアドバイスしました。「事実関係を確認し謝罪できるように指導したいですね。そのため、会話ボードを使って、行動とその時の思いを視覚化し、Aさんに自分の行動を客観視させてみてはどうでしょうか」 会話ボードとは、その時の行動や両者の思いについて話し合い、その内容をボードに書いていくものです。行動や思いを視覚化することで解決方法を探っていく手がかりとすることができます。 望ましい行動を指導する 会話ボードの活用により、Aさんは自分の行動のきっかけとなった思いを語ることができました。また、Bさんの気持ちにも触れることができ、「Bさんに悪いなと思っている」と素直に言えることができました。そして、その後「Bさんにどうやって謝るのか」「Bさんと話がしたいときにどう声掛けしたらよいか」について、先生と話し合い、謝る練習と声を掛ける練習をしました。 自らの行動を客観視させることにより、望ましい行動を指導することができた一例でした。